顎関節症とは?
顎関節症(TMD)の症状 TMD (Tempromandibular Disorders) 主症状 1)顎関節部及びその周囲の自発痛、運動痛 2)開閉口運動異常(制限、偏位、蛇行) 3)関節雑音(クリッチング : カキッ、コキッという音)(クレピタス:ミシミシ、ジャリジャリという音) 4)顎関節部違和感 副症状 頭痛、肩こり、腰痛、耳痛、めまい、耳鳴り、耳閉感、眼痛、自立神経失調症の諸症状、顎位の不安定感など 顎関節症とは以上のような主に自覚的症状を示し、さまざまな病気を含む複合疾患であると考えられます。 肩こりとかみ合わせについて 肩こりと歯科領域とは、多分皆様がお考えになっているよりもはるかに密接につながりを持っています。その中でも不正な噛み合わせは、歯科領域における肩こりの原因の最たるものでしょう・・・と言うより、ほとんどがこれだったといっても過言ではないと思います。 そういえば、「肩がこると、歯が浮いたようになる。」とおっしゃる患者さんが時々いらっしゃいます。症状としては確かにそうなのでしょうが、これは肩こりが原因で口の中にトラブルが起きているのではありません。元々口の中にある病気が、肩がこるというような症状として現れる自分自身の抵抗力の低下により、二次的に鎌首を持ち上げたに過ぎないのです。言いかえれば、「口の中にそのような病気があるから、肩がこっている」可能性が大だということです。 では、今、唾を飲み込んでみて下さい。呑み込む時、上下の歯を噛み合わせたでしょ!その位置が中心咬合位といって、とても大切なあなたの上下の歯が最大面積で接触し、食いしばることのできる位置なのです。今度は、その位置から左右に歯軋りが出来ますね。それが下顎の側方運動で、前に動かせば前方運動です。前方と左右へ顎を動かした時の往路と復路は、基本的にスムーズに行われ、且つ一致していなければなりません。 このような顎の運動と歯の関係をここでは噛み合わせといい、その噛み合わせと顎の運動に狂いがあるとしたら・・・噛んだ時の顎の筋肉や関節の状態は歯の噛み合わせによって決められているわけですから、それは、まるで右足に下駄を履いて左足に靴をはいているようなことに、あるいは偏磨耗した靴を履いているようなことになるのです。このことは左右一対で常に連動して動く顎の関節に多大な影響を与え、筋肉の運動をも妨げます。その筋肉はもちろん頭蓋骨に、そして首にもつながっているものですから、当然、首や肩がこるという症状が出ても不思議ではありませんね。それでは、その不正な噛み合わせの原因となっているもの別に、書き出してみることに致します。 親知らず 親知らずは、一本も持っていらっしゃらない方から、上下左右に4本持っていらっしゃ方まであり、その状態も人によってさまざまです。顎は単に蝶番運動(ちょうつがいのような単純な開閉運動)だけをしているのではなく、前述の通り水平的な運動も含め、三次元的に動きますので、その運動路を阻害していることの最も多いのが、親知らずなのです。 上下の歯の噛み合わせた時、互いの咬頭が相手の窩の部分に位置しているというのが通常です。ところが、スムーズにその位置に行くことが出来ず、ある一箇所、あるいは複数箇所の咬頭どうしが他の歯よりも先に当たっている(咬頭干渉・早期接触)ことがあります。 また中心咬合位では安定しても、側方運動に不正な当たりのあることもあります。これらも、前述の通り左右同じ高さの靴でなければいけないのに、片一方は早く接地してしまう下駄を履かされていることに慣れているようなもので、非常に不自然な動きをしなければいけなくなっているのです。 この習慣性の不自然な動きが顎の関節や筋肉に負担をかけ、障害を生みます。それが、顎関節症と呼ばれるものであったり、肩こりや頭痛であったり、ひどい時にはめまいや耳鳴りの原因なったりするわけです。 低位咬合 読んで字の如く、噛み合わせの位置が低いという意味です。噛み合わせが低くなると、やはり顎の筋肉にトラブルを生みます。要はその方にとっての正しい噛み合わせの高さを保っていただくことが大切なのです。 予防方法 次のようなことを心がけて噛み合わせが悪くなるのを予防し、腰痛や肩こりを改善しましょう。 1、片方ばかりでモノを食べずに左右交互によく噛むようにしましょう。 2、野菜や硬いものをよく噛んで食べましょう。 3、背筋を伸ばして姿勢を正しましょう。 4、うつ伏せやほおずえはやめましょう。 5、虫歯は放っておかずに治療しましょう。 6、鼻での腹式呼吸を心がけましょう。 |
顎関節症の原因
TMDの病因と考えられる因子 ● ストレス ● パラファンクション(歯ぎしり、くいしばりなどの異常機能のこと) ● 打撲や事故による外傷 ● 不良習癖、うつ伏せ寝、頬杖など ● 不良補綴物 ● 大開口や硬い食物の摂取 ● 長期的偏咀嚼 ● 精神的因子 これらの因子により顎が痛かったり、顎を動かす時音がしたり、口が開かなかったり、顎の回りまで症状が起きる病気が顎関節症です。 また、耳鳴りや肩こり、偏頭痛、腰痛など、不定愁訴も顎を治すことによって症状が軽減すると言われています。 顎を身体の一部として顎関節症を考えてみましょう。 通常、人間は噛んでいません。すなわち、顎は頭蓋骨から筋肉でぶら下がっているようなものです。顎を支えている筋肉のバランスは、全身の筋肉のバランスの影響を受けています。 したがって、生活環境の様々な局面において精神的なストレスを感じたとき、全身の筋肉が緊張し身体の歪みが強くなり、身体のバランスが変化すると、顎も全身の影響を受けて位置にズレが生じるのです。 ところが噛み合わせは急激な変化はしませんから、噛んだ時は噛み合わせのバランスに戻されてしまいます。したがって全身の筋肉の緊張が強くなるほど、噛み合わせのバランスとの間の差が大きくなってしまい、 その負担を顎関節で受けてしまうのです。それが顎関節症の基本です。 もちろん、不適切な歯の治療やむし歯を放置した場合噛み合わせは変化してしまいます。その場合、それまで以上に全身の緊張との差が大きくなる可能性があるわけです。 |
顎関節症の治療
顎関節症の治療ではまず最初に、保存的な治療法が用いられます。つまり顔面や顎、歯の構造に直接影響を及ぼす治療法は初期治療においては用いられません。ほとんどの問題は時間の経過とともに消えていくと考えられるため、簡便な家庭療法(表1参照)が症状を和らげるのにまず推奨されます。 たとえば、柔らかいものを中心に食べるとか、冷温湿布をした後に顎の運動するとか、無理に口を大きく開けることを避けるといった方法です。 他の治療法としては、消炎鎮痛剤の短期間の使用があります。大抵の痛みはこれらの保存的な治療法で軽くなりますし、そうすれば平常通り口を開けられるようになり、食事や会話時の不都合も無くなるでしょう。 (表1)
なお、場合によってはこれまで述べてきたような初期治療で症状が改善しないことがあります。正常な治癒期間を超えてもなお痛みを訴えるいわゆる慢性疼痛症の場合です。 その時はスプリント療法(整形的装置療法)を用い顎関節及びその周囲筋肉の緊張をとることで疼痛を軽減させ、下顎位の安定をはかることが目的です。 特に歯ぎしりやくいしばりなどがある場合はこのスプリント療法(写真1.2)が用いられます。
顎関節症の予防、改善には日常生活の過ごし方が大きく関わってきます。わが国のような先進工業国においては我々は多かれ少なかれ何らかのストレスと直面しながら日々生活しています。 まず、出来るだけ心身共にリラックスする時間を作りましょう。適度な運動等によって気分転換を図り、食事、睡眠をしっかり取るといった事を心がけて下さい。 |